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魔と光が交差する王国。セントリーノ。 人に属するものも、魔に属するものも、日差しを浴びて、或いは影の中に潜って限りある生を謳歌していることだろう。 今日の実りは過去最高だ。と仕事の帰りの男たちは夕闇に混じってビールをあおり帰ってくるだろう我が子や夫の為に食事の支度を急ぐものもあり、 明日もまた平和な日々が続くと信じて無邪気に遊ぶ少年少女たちがある。 そんな平凡などこにでもある日常に久方ぶりに王都からある知らせが届いた。 __『常世の闇の森深くに住むという魔王を倒したものに褒美と共に勇者の銘を授ける』 数百年ぶりの魔王討伐に対するおふれが出たのは今朝のことだった。 「ふむ。ユーシャ、か」 その起源は古く、古から魔王が退治される度に新しく王から銘を授けられ、人々から希望を望まれ続けてきた。 ある晴れた日の魔の森に近い街、サンドレット。 そこに一組のうら若い少女と幼い人間の少女がいた。 「リコレッタ。なぁ、ユーシャってなんだ?」 勇者といえば万国共通悪いものをやっつけるヒーローである。 だが問う少女と問われたたその幼い少女にはヒーローとはとても思えないある事情がある。 「私たちとは全く関係のない話ですよ。さ。帰りますよ」 たて看板をひっしで見上げていた少女はその一言にやっと周りが見えたようだった。 「いやだ。まだ遊ぶ」 「子供じゃないんだからマオ様ってば…さっきだって露店でソフトクリーム買いましたよね? それ食べていいこだから、大人しく帰りましょう?」 「……リコも食べたいのか? しょうがないな」 てててっとその少女、マオと呼ばれる少女はリコと呼ぶ幼い少女に駆けてくる。 ところが、角から死角になった場所でマオは何かに躓き派手にぶっころんだ。 「ああっ!!」 「おい、コラ糞がき。わいのスーツにソフトクリームなんぞ付けやがって、なんてことしてくれるんだ」 現れたのはいかにも。悪。が似合いそうなチンピラらしき5人ほどの青年達だった。 「すみません。悪気はなかったんです」 少女のかわりに謝る幼い少女、リコレッタは軽く頭をさげた。 そうするのが人ならばする動作としての礼儀と聞いたから。 マオはまだ呆然と立ち尽くしている。 「悪気はなかったで済むならこの街の警察はいらねぇなぁ。あーあーどうしてくれよう?」 「そこのぼーっと突っ立ってるお嬢ちゃん、よく見たら綺麗な顔してるね。これなら兄貴のスーツ代くらいちょちょいのちょいで体で払えそうだね」 「おーそうだな。上モンだ」 「オラ、来いよ」 「……せっかくのソフトクリームが…なんてもったいない」 ぽつりと絡まれていた少女が声をあげる。 「なんだと」 その一言はしっかりチンピラの耳にも入っていたようだ。 「ああ。マオ様。危険ですからお下がり下さい」 リコと呼ばれた幼子もチンピラに向かってかなり警戒態勢をとる。 不穏になっていく空気にチンピラの男は眉間に皺を寄せて言う。 「ああ? ソフトクリームなんて、この俺様のスーツに比べたらなんてことないじゃないか」 それは不条理な人の理だ。 人といういきものを知らない少女はその何も知らない目でその価値観で言う。 「お前ごときのスーツなんて、リコレッタにあげるはずだったソフトクリームよりも上なんてありえない」 それは少女の理。 「なんだと。馬鹿なお嬢ちゃん達だね。大人に敵うとでも思っているのかい? 無理に決まってるだろう。お兄さんたちがお灸をすえてやろう」 「……街一つ破壊してやろうか」 少女は苛烈な思いを口にする。 「ははっ。ガキが、んなこと出来るわけねえだろ」 チンピラははははと大声で嘲笑する。 「……マオ様。だめっです。こんな奴らの為にわざわざんなことする必要はありません。それにほら」 すっと幼い少女の手が男の汚れたスーツの上にかざされる。 するとどうだろう、 ソフトクリームの白い汚れが一瞬にして消え去った。 「この街名物のソフトクリームがまた食べにこられないなんて残念でしょう?貴方達もこれで許してくれませんか」 「な。なんだ! 汚れが消えた? どうやったんだ?」 慌て驚くチンピラ達。 見守っていた少女はまだ不満げだけれども。 「リコがそう言うなら。我慢する」 「行こうか。リコ」 「はい。マオ様」 スタスタっと二人は森の方へと向かって姿を消していった。 呆然と見送ったチンピラ達は、少女達が遠く見えなくなるまで状況理解に頭を回していたが、クンっと鼻を利かせたチンピラの内の一人が甘い匂いがどこからか漂ってくることに気づき目をまばたかせた瞬間、少女にソフトクリームをぶつけられた男のスーツに白いもやが現れたと同時に白いしみとしてスーツに広がっていった。 「あ。兄貴。ソフトクリームついてるぜ」 「なんだと? さっきは確かにきえたはず……ああっ。俺の一丁裏が!! クソ……あの女、どういうことだ?」 見回してみても少女達はもういない。 男はチンピラの一人の頭を拳をつくって殴りつけると怒りを発散するように地団駄を踏んだ。 |