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「お……お試しで一週間とかやってみない?」
「試すもなにも必要ないものに費やす時間などありはせん」 尚も言いよどむキーリをクールに言い放ったマオには悪気はこれっぽっちもない。 おまけに罪悪感もないから始末におけない。 「ま……マオさん?」 「我の名前はマオだ。……さん付けなど気持ち悪い」 「じゃ、マオ。どうしたら俺と付き合ってくれる?」 「付き合うって。何処に行くんだ?」 これもお約束である。 「んと。えと……じゃぁ、俺の次の目的地レイバーニング村までっていうのはどうかな?」 マオのそっけない返答にもめげずにキーリは提案する。 これで一緒に行ってくれるとくればまだ脈はあるとキーリは信じていたからなのだが…… 「駄目だ。今の時間から行くと帰れなくなるだろ? 我は夜までに帰れないところには行かないことにしているのだ」 「そんな……」 「じゃ、イベント見物も終わったしそろそろ帰るか? リコレッタ行くぞ?」 「はい。マオ様」 そういうと二人は街の出口の方、森へと向かって歩き出した。 「ちょっ、ちょっとまって」 慌ててキーリは必死の思いで二人?を呼び止めた。 ひつこく言い迫ってくるキーリにいい加減マオはあきれをとおりこして非常に困惑していた。 もう表通りに出たので大丈夫とみこして先ほどから歩くスピードはゆるやかだ。 そしてマオはかつて無い状況にどうしたものかと考える。 初めは簡単にあしらってしまえると思っていたのになかなかどうにもこの少年はしつこいらしい。 だからふと見上げた看板にのっている言葉に飛びついてしまった。 『常世の闇の森深くに住むという魔王を倒したものに褒美と共に勇者の銘を授ける』 そう書かれたこの国の国王が出したおふれに。 「リコレッタ。勇者になるのは難しいことなのか?」 ポツリと零れた言葉にリコレッタは怪訝に思いながらも返答する。 「そりゃそうですよ。なにせ、マオ様を倒すぐらいに強くならなきゃなれませんもん」 というかマオ自身が森で魔王などと呼ばれているものの正体なのだが。 「そうか。ならば、どうしても付き合いたいなどと考えているのなら勇者とやらになれば考えてやってもいいぞ」 それは絶対に不可能なことだとマオは考えてそう述べた。 突如言われたことにキーリは大いに驚いた。 「勇者? ……勇者になれば付き合ってくれるのか」 しなびた草花のような態度から一変、急に活気ずくキーリにマオは冷めた目を向けてどうせ無理だろうと気楽に思った。 魔王はマオを倒すぐらいに強くなければ無理だなんて……自身の能力を知り尽くしているマオはこの少年がマオを倒せるほど強いなどとは全く感じられなかったからだ。 ただ、剣の腕前は認めようとマオは思う。 マオと背中を合わせて戦えるぐらい剣を握った少年は強かったからだ。……だがそれだけだ。 実際マオと戦うなどとなると戦略も重要になってくる。 マオは生まれ持っての能力で魔力を自由に扱うことができるが、キーリは剣のみなのだ。 どう考えてもキーリは不利である。 自身が魔王と呼ばれていることを知らないマオは魔王とやらも災難だなぁと人事のように考える。 が、深き森に住む魔王と呼ばれているのはマオ本人である。 本人は全くあずかり知らないことだが…… 「じゃぁ、魔王を倒したらもう一度この街に来るよ。そのときは俺と……」 マオがこの街の住人だと思い込んでいるキーリはそんな条件を出した。 「ああ。出来るものならな」 そのことに気づいていながらもどうせ無理なことと突っ込まずにマオは了承の意を表した。 「マオ、俺頑張るから」 「勝手にしろ」 そんな理由で二人はそれぞれの道を歩むこととなったのだが…… それはまだほんの序章にすぎない。 それぞれの旅はまだ始まったばかりだ。 「勇者」を目指す少年に「魔王」と呼ばれる少女。 ここで出会ったことは運命に定められていたことなのだろうか? こうして少年の修行の旅は英雄を目指すはずが、勇者を目指すものになり、魔王とよばれる少女は無自覚に宿命の相手を作ってしまったのだった。 |