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「ごひゃくごじゅう!!」 「はい! 550出ました!……他にはいらっしゃいませんね? ……ではこの方に決定致します」 店主が一番だと銘打っていた剣はそこまで競争率は烈しくは無かった。 まぁ鞘から抜かれていない剣だけを見せられてもあの店が作ったものだと知らない人にとってはただの鞘の装飾もシンプルな実戦用の剣とだけとしか見られなかったのだろう。 カンカンと鐘を鳴らす司会者。 焔で二度も焼けてアチコチボロが出てきている旅装束を身にまとったキーリはズタボロになりながらも無事落札することが出来た。 「さぁ、賞品を受け取りに来てください。その際、お支払いもお願いします」 そう司会者の男が案内し、キーリは舞台に向かう。 「……ち。あのドラゴンの飼い主かよ。猫で一円単位で争ってた」 傍まで来てボソリと司会者が何か言ったがキーリはお構い無しに剣を受け取るとその場で剣を鞘から抜いた。 シュピィィインと光の筋が鋼を撫でるように走り、剣特有の鋼の輝きが辺り一面に放たれた。 やや傾けさらに見るとその薄さと先端まで行き届いた手の入れように職人の技を感じる。 「いい剣だな。……これなら大抵の相手で使えそうだ」 フッとゆるやかな笑みをみせるとキーリは金の支払いをしようと司会者に声をかけた。 司会者は一緒に立っていたバニーガールのお姉さんと何やら話しこんでいたがすぐに 何か焦ったような声で後はバニーガールのお姉さんに任せると告げ、バックグラウンドにひっこんだ。 「?」 「あのお会計を……」 「あ。はい」 バニーガールのお姉さんにお金を払い、キーリは舞台を静かに下りていく。 その時舞台裏で交わされる会話がキーリの耳に届いた。 「……次の賞品がラストだな。……おい、一番の大物が起きていないみたいじゃないか? どういうことだ?!」 「……ごめんなさい、父様。拾ってから随分経つしそろそろ目を覚ますと思うんだけれど」 「一番の大物? ……この剣よりか。ちょっと見てみたいな。」 「マスター会計終わったんだろ? じゃぁもう用はないから行こうぜ? 魔も十分吸い取ったし、満足満足! こんなところじゃやっぱりマスターは不安だし」 ヴァイオレットの心配も聞こえないようにキーリは溢れる好奇心からか舞台から下りると舞台裏の方へ回ってみた。 「あ。コラ、マスター!」 気楽に見れればいいやと思っていたキーリだったが次の瞬間言葉がなくなる。 触れてはいけない毒花のような色鮮やかで魅惑的な少女……マオがそこにいた。 彼女には魔が溢れている。……彼女がまとう雰囲気からそう感じさせられるのに、 目を惹きつけてやまない引力がそこにはあった。 細い体に陶器のような白い肌。それに比例するかのような漆黒の黒い髪。 耳は尖っていてかの知力の高いとされるエルフ族を彷彿とさせる。 唇はふっくらとしていて全体的にやや幼い表情を思わせる造作。 残念なことにその瞳は閉じられていて、どうやら眠っているようだ。 細い足には縄が、意外としっかりとした手には手錠がそれぞれされており彼女を捉えていた。 「さ。舞台に運ぶぞ」 司会者は舞台脇に置いたコマの付いた椅子に、フラフラとしながらも何とか眠るマオを運び、椅子に座らせ、そのままコロコロと舞台上へと押していく。 その後を幼女が手に青い何かを抱えて追っていく。 「綺麗な女の子でしたね。マスター?」 あっけにとられて見ていたキーリとヴァイは間違いなく度肝を抜かれていた。 「……エルフだ。何故自由の民とされるエルフが捕らえられている?しかも魔だと? 本来のエルフには魔はほとんどいらないものなのに?」 キーリの手は震えていた。 「ま……マスター?」 ヴァイオレットはキーリのどこか一点を見つめている目を不可解に思った。 「エルフなんて捕らえてエルフの王が黙っているはずがない。何より、俺が許さない。」 なんだ? なんだ…どうしたというのだ? キーリも実家にいた頃、猫というモンスターを 囲っていたくせにエルフは違うというのかとヴァイオレットは少し呆れながらキーリを見つめた。 「……猫は基本的には自由だろ。飼い猫となっても真の主に懐くことは無いし、最近じゃ餌が見つからなくて瀕死になっている猫もいる。 飼い猫になることは僅かな不自由と餌との等価交換だ。そうすれば猫も困らない。 だがエルフは違うだろう? 自由に餌も取れるし、食にあえぐこともない。」 だから違うのだとキーリははっきりと言った。 ……マオが現れた瞬間、会場から波が舞台に向かって打ち寄せた。 少女は最高級の人形のように美しい。 それだけで会場の熱気は相当たるものになっていた。 「さぁさ。お立会い! 本日のラストを飾りますのは、この人形のようなエルフの美少女!! 本日はあいにく眠ったままで御座いますが、目が覚めた暁には彼女はいづこから現れた妖精のように愛くるしい表情で動き回りだすこと間違いないでしょう。 日々小鳥のような声で歌い、貴方様に絶対の忠誠を誓い一生を遂げるのです。 そして、極めつけはこの人形遊びが一人でも出来るよう彼女のペットの幻のレアドラゴン! ブルードラゴンの幼竜をお付けいたします。 竜のみの販売は致しておりませんが、竜が欲しい方も是非とも参加頂ければ光栄で御座います。 ――では、1500Gから参ります」 「ブルードラゴンだって!?」 ヴァイオレットは自分と自分と同じ種の竜がオークションにかけられることに驚いた。 「このオークションは許されざるものだ」 キーリは既に何か決意を秘めた目で場を眺めている。 「闇のオークションだって武器屋の店主さんも言ってたろ? しょうがないよ。 あぅ。でも自分と同じブルードラゴンか……いくらの値がつくのかな?」 ヴァイはそれに対しては答えず、別のことに興味を持ち始めたようだ。 「ヴァイ。俺はやるよ?」 何を成すのか。 それは言葉にしなくてもヴァイオレットはまだキーリとは短い付き合いだけれども自然と理解した。 「マスター、まぁちょっとまってみてよ。きっと面白い結果が見れると思うから。 ……それにしてもブルードラゴンをオークション……なんて無知な人間ども」 苦くヴァイオレットは哂った。 司会者のよく響く声に皆が集中しているのが目でみてわかる。 その証拠にせりが始まると同時にどよめきが起きた。 提示された値段はこのオークション中で既に過去最高額以上だ。 彼女らは一体誰にいくらで誰に売り渡されるのか? オークションに参加する者も見守る者も、それぞれの注目を帯びた視線が舞台上に注がれる。 「1520G!」 「1600G!」 「1800G!」 「2000G!!」 高鳴っていくどよめきに会場の興奮は最高潮に達して想像以上に煩くなっていた。 ――その舞台に突然のアクシデントが舞い降りる。 「ん? ……ここはどこだ?」 眠っていたマオが目を覚ましたのだ。 皆がこぞって凝視する中、見開かれた瞳はルビーのような吸い込まれそうな深い紅色。 その妖しげな惹きつけてやまない色に観客達は過敏に反応する。 キーリも例外なくその色に魅入ってしまっていた。 それは司会者が言っていた過剰な演出をまるっきり覆すかのような意思の強そうな力強い印象だった。 目覚めて直ぐにマオは辺りを見回して現状把握をした……まるで王者のように周囲を堂々と。 そして、彼女は問いかける…… 「……イベントはどうなったのだ?」 「イベントの最中だよ。おねえちゃん。」 椅子の直ぐ傍にバニーガールと共に目立たないように立っていた幼女はマオが気がついたことに嬉しそうに反応した。 「おやまぁ、想像していた以上の魅力的な人形で御座います。 血の色をした不気味な目をしていますが中身はそれ以上のものを存分に秘めているかのようですのでそれはご購入者の方が確かめてみてください。 声も出ますので決して不良品などでは御座いません。どうぞ存分に歌わせてやってください。 ……彼女は……ぐっ。げほがはっ。」 「うるさい」 ぺちゃくちゃと喋り続ける司会者の男にマオは殺気というものを漲らせながら一言つぶやいた。 司会者の男は何が起こっているのかわからないまま何故かとうとう喋れなくなってしまった。 マオの殺気に当てられたのだ。それでも口をぱくぱくさせる男は何故喋れないのか理解できないでいた。 「どういうことだ?」 殺気を幼女にも向けるマオ。 幼女は自身が震えていることに気がついたが幼女自身の根性で恐怖を跳ね除けた。 「フフ……おねえちゃんにはイベントの景品になってもらうことにしたの。ごめんね? おねえちゃん。」 無邪気に笑う笑顔にマオはもう騙されたりなんかしない。 |