「だってもしかするかもしれないじゃない」
「聞け。ルシア。俺にはお前しかいない!」
「信じられないわ。だって、エドワーズったら子供の頃から嘘ばっかりじゃない」
「信じろ。今回は大丈夫だって。お前の勘違いだ」
「ええぃ。うざいわ、このバンパイア!! エドワーズを退治する為だけに私聖職者になったんだから」
「最近ルシアが大人しくしてたと思ったらそんなのやってたのか? 今すぐ辞めろ。お前には似合わん」
「何言ってるのよ。これは私が決めたことよ。神様は嘘なんかつかないからいいわ。エドワーズとは大違い!! もう決めたの。今更口出ししないで」
「あの……」
「何勝手に暴走してるんだ。ルシア。そんなの飽き性のお前がやっていけるとでも思っているのか。いいか。俺の目を見てもう一度言ってみろ」
「すみませ……」
「ええ、何度だって言ってやるわ、エドワーズなんてだいっ嫌い!!」
「「あ・の!!」」
「なんだと! ルシア!! ……ってああ、さっきから煩いな。どうした?」

「なんか、痴話げんかみたいだし。俺達帰っても?」
おずおずとキーリは提案する。
「そうだな……帰るか。リコレッタ」
マオもそれに同意し、相手の出方を伺ったが。
「駄目よ。魔王様は駄目。女の立場になって聞いててもらわないと」
どうやらストップをかけられてしまったらしい。
「ほほう。これはこれは綺麗な人ではないか、名前はなんというのだい?」
マオに気づいたエドワーズはさっそくプレイボーイの噂の元を発揮した。
「マオ様、こいつ火だるまにしても?」
「許可する。思う存分やれ」
「そうよ。リコちゃん、やっちゃって!」
竜のすがたのリコレッタは今日は血の気が多くなっているからかいつもよりも何倍も喧嘩ぱやかった。
「これはこれは珍しい、血を吸うとなんでも願いがかなうと有名なブルードラゴンではないか。こちらこそ幸運だ。さっそく頂こう」
少し驚いたような反応を見せるエドワーズはすぐに目標を変えてきた。
「何でも……願いがかなう? 本当なの? それは。……だったら!! 私だって」
エドワーズの言葉に触発されたのかルシアも何かする気がまんまんだ。
「おい。リコレッタは我の食料だ。貴様らの分などない」
「これはこれはお嬢さん、すまないがそれは譲れないな。私にはどうしても叶えたいことがあるのだから……なぁに少しだけ血を貰えればいいんだ」
そういうとエドワーズは襲い掛かってきた。
「ごめんなさい。魔王様。私だってどうしても手に入れたいものがあるの。私はリコレッタちゃんには恩があるからせめてもう一体の方で我慢するわ」
ルシアはルシアでヴァイオレットに向かっていく。
「……くっ、ルシア!! まさかヴァイオレットまで狙って」

 エドワーズはどこからか銀のナイフを取り出し、マオを的確に狙ってくる。
高速の風を斬る音が聞こえてマオの顔に傷がつき、髪が乱れる。
「この……」
攻撃は連続で来る。
マオはナイフを除けるのに精一杯で攻撃を仕掛ける隙が無かった。
――リコレッタを狙っている!?
そう感じるのもリコレッタの急所ばかりめがけてナイフが投げられてきているからだった。
次々とリコレッタを庇いながらも銀色に光るものを避けていくうちにマオは四隅に追いやられたのを感じた。
「マオ様!!危ない」
二本の銀の光がコチラに向かってくるのを感じマオはそのうちの一本を叩き落した。
もう一本は腹に深く突き刺さっている。
結構距離があるのに一体どんな力で放った技だろう。
これもバンパイアだから成せる技か……そんなことを思いながら、マオは刺さったナイフを力一杯込めて腹から抜く。
大量の出血とともにカランと銀のナイフは外れた。
「くそっ……どん底だな」
「このぉ、よくもマオ様を!!」
リコレッタは最大限の蒼白い焔をエドワーズに向かって吐いた。
「脇がガラガラだ。それじゃぁ、頂きますかね。竜族の血はどんなものか……」
「リコレッタぁああ!!」
ブンっと音がしそうなぐらい強烈な蹴りをマオはエドワーズに向けて放った。
「おっと……」
マオの攻撃は軽く避けられた上にリコレッタの首元まで握りこまれ、リコレッタを奪われてしまった。
「リコをどうする気だ!?」
「何って血をいただくのさ。私はバンパイアだからね。ああ、
君の血も後でよかったら貰ってあげてもいいよ。私はこれでも美しいものは大好きだからね。」
ペロッとリコレッタの首筋をエドワーズは舐めるとフフっと笑った。
「マオ様……」
リコレッタは首もとを握られて苦しそうに尚も主人を呼ぶ。
「ふざけるなよ。貴様!!」
マオは最大級の魔力をねって、魔球を放った。
黒い塊は球の周囲をバチバチさせ高速でエドワーズに向かっていく。
「はははっ、やるね。お嬢さん」
ものすごい轟音とともに球はエドワーズに当ったとマオは思った。
マオはそのとき確かな手ごたえを感じていた。
――殺れる。
球が接近して後もう一歩というとき、エドワーズの体は黒い細かな塊になった。――蝙蝠だ。
球の形だけくっきりと丸い形を開けて黒い塊は移動する。
「なっ……。」
――凄まじい、空気を裂くような轟音が響き渡る。
球は屋敷にあたり、屋敷に空を見上げられる穴をあけさせた。

「それじゃぁいただこうかな」
バンパイアの姿に戻ったエドワーズはリコレッタの首を再び握りしめていた。
瞬間、スローモーションのようだった。
赤毛の男は蒼いリコレッタの首筋に犬歯を突きたてた。
マオは分っていながらも何もすることが出来なかった。
そう、先ほどの攻撃で一時的に体力が限りなく低下してしまったのだ。

舐めるような音にストローか何かで水をすする音。
あたりはこの音に支配されていた。

そして。
ボトリとリコレッタの体は宙に放たれた。

「リコ!!」



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