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薄暗い城内。 灰色のレンガが積み重なって出来た回廊にマオとリコレッタはいた。 マオはどこから採ってきたのか野生のリンゴを手にぽんぽんと空中に上げてはキャッチするという一連の動作を繰り返していた。 つまりは暇なのだ。 そんなマオをみてリコレッタは先ほどの件に耐え切れず気づいたときには思わず呟いていた。 「マオ様、あなたは何故人をこんなにもやすやすと傷つけるのです?」 「では、問うが。何故リコレッタは人間なぞの味方をする?」 ぽんぽんとリンゴが宙に舞う。 リコレッタに一瞥もくれずにマオはリコレッタに問いかけた。 それは前々からマオが疑問に思っていたことだった。 多くのモンスターは基本的に自分の種のことしか考えず、利己的なものだ。 それなのにその特例中の特例の例外が最も破壊衝動に溢れたマオの傍にいるというのだからおかしな話だ。 「それは私がブルードラゴンだからです。ドラゴンという種は私が生まれる数百年前に既に多くの他のモンスターと違い人間と共存という道を選びましたから。今や荷物や長距離間の移動にドラゴンはその足として活躍しています」 「フン、人ごときに足に使われて悔しくはないのか?ドラゴン全体で街を襲えば数分も持たず小さな村ごときなら壊滅するであろう?」 「我々ドラゴンの住む地域には手を出さないと確約を取り付けましたから。ドラゴンは気性が荒いものもいますが多くが賢く平和を尊ぶのです」 「は。何が水を司る偉大なる竜だ。種を守る為に人間に怯えてへらへらと頭を差し出したってか?」 ブルードラゴンは滅びかけている。他のレッドドラゴンやイエロードラゴンなどは知らないが、一族を守るためにマオはブルードラゴンはそうしたのだと確信した。 「違います! 我々ドラゴン族と人間は対等な存在として……」 「対等? 闇オークションではその存在を狙われていたブルードラゴンが何を言うんだ?」 「……それは、あのような場だったからです! 信じてください。人間とも仲良くなれば共存できると……」 そこまでリコレッタは言ったがその続きはマオの鋭い目によってさえぎられた。 「……お前の説教はもう飽きた。はっ。そこまで言うのなら確かめに行ってやろうか?」 「マオ様?それはどういう意味で」 「言葉のそのものの意味だ。我が人間としてこの尖った耳を隠してその谷にまで出向いてやろうと言っているんだ。お前にとっても数百年ぶりの里帰りになるだろう? いいことじゃないか」 その言葉にリコレッタは数秒表情が停止した。そして気づいたときにはひやりとした汗が流れ出ていた。 「ま……マオ様がいらっしゃるんですか? しかし、私の村にはこれといって何も娯楽施設など存在しませんが」 リコレッタは内心苦々しい思いをひた隠して忠言した。 「ま、たまには大自然というものも感じるのもよいだろうさ」 「そこまで仰るのでしたら、雨季の月の月食の明後日がよろしいかと」 「? 何かあるのか」 「水の慰霊祭というものが行われるのです」 「ほう」 「そこで人間というものをよく観察してください」 リコレッタは拗ねたようにそっぽを向くと何やら羊皮紙に文字を書き込んでいた。 「手紙か?」 「一応私が帰ることを先に告げておかなくてはいけませんから」 「そうか」 マオはリコレッタを鋭い目で一瞥すると手に持っていたリンゴをひとかじりした。 リンゴはほの甘くすっぱかった。 数日後、リコレッタは驚愕することになる。 自分の育った場所が人間たちによってどれほど改変させられたのかを自身の目で見せ付けられたからだ。 |